失敗しない不動産コラム
2023/02/17
日照権とは? ~戸建てトラブル~
一戸建て住宅などに住む住民が、近隣にビルなどの高層建築物を建築されたために
“日照権を侵害された”という事例をたまに耳にするかもしれませんが、日照権とは一体どんな権利なのでしょうか。
日当たりに関するトラブルは意外と身近に潜んでいます。
今回は、日照権の定義やその内容とともに、過去に起きたトラブルの事例についても紹介します。。
┃日照権とは?
◐ 日照権とは“建物の日当たりを確保する権利”のことです。
“日照権”そのものが法律で定められているわけではなく、それを保護するために、いくつかの法律を基に規制されています。
日照権に関わる法律には、建築基準法で定められている“斜線制限”と“日影規制”の2つがあります。
■斜線制限(しゃせんせいげん)
┗斜線制限とは、建物と建物の間の空間を確保して、道路や隣地の日照・採光・通風を妨げないために、建築物の高さが制限されることを指します。
斜線制限には「道路斜線制限」「隣地斜線制限」「北側斜線制限」という3つの斜線制限が存在し、
それぞれ内容が異なります。それぞれがどのような制限を意味するものなのかを簡単に把握しておきましょう。
┗①道路斜線制限…接している道路の幅に基づいて、道路を挟んだ反対側の建物の日照などを確保するための制限。
┗②隣地斜線制限…隣地に面した建物部分の高さが20mもしくは31mを超える部分についての制限。
┗③北側斜線制限…北側隣地の採光や通風を確保するための制限。
┃日照権のトラブル事案
日照権の侵害などを理由に起きた裁判や、裁判に発展しないまでも近隣住民から苦情が入った事例について紹介します。
日照権を侵害されたことによる損害賠償請求および建築差し止め裁判は、過去の判例でも意見が分かれています。
ただ、過去の判例から見れば、社会通念上“受忍限度”を超えるか否かで判断されます。
それぞれ日照権侵害が認められたケースとそうでないケースについて見ていきましょう。
◆日照権の侵害が認められたケース
隣地にマンションが建ち、日当たりが悪くなってしまった事案。
住民への損害賠償金の支払い、および建物の地盤面から20mを超える部分の撤去を命じました。
◆日照権の侵害が認められなかったケース
隣地にマンションが建ち、日当たりが悪くなってしまった事案。
“生活の本拠地である1階和室、及び茶の間では、3時間程度の日影が生じている”などを理由に受忍限度を超えていないと判断されました。
┃近隣からの苦情
住宅を購入すると、そう簡単に引越すことはできません。快適な状態で長く住み続けるためにも、
自分たちの暮らしを脅かすような受忍限度を超える存在に対して、抗議をしたり提訴したりするのは当然といえます。
それでは、日照権に関する法律には触れないような条件下では、そういったトラブルは起きないのでしょうか。
実際には、建てられたのがマンションなどでなく一戸建て住宅であっても、
たとえ日照権に関する制限をすべてクリアしていても近隣住民から苦情がくることはあります。
◆家を建て替えたことによって、お隣の日当たりが悪くなってしまったケース
たとえ一戸建て住宅で日照権に関する法規制から逸脱していなくても、
新しく建築された一戸建ての位置や隣接する住宅の窓の位置によっては日照時間が減る可能性があります。
ただし、先ほど紹介した裁判例からもわかるように、“受忍限度”を超えない限りは日照権の侵害は認められません。
◆太陽光ソーラーパネルがまぶしいと言われてしまうケース
昨今、省エネ住宅が推進されていますが、その一環として太陽光発電を設置される方もいます。
太陽光発電のソーラーパネルは太陽が一番当たる場所、角度で設置します。
そのため、時間帯によっては太陽光が近隣住宅に反射して、まぶしいと苦情になったケースもあります。
┃まとめ
日照権によるトラブルは高層建築物のみならず、一戸建て住宅同士でも起こりうるものであると認識しておく必要があります。
なお、日照権は人が持つ当然の権利であることから、トラブルに発展しやすいとも考えられます。
今回紹介した内容を基に、一戸建て住宅を建築する際には日照権の保護をはじめ、近隣住民の快適な生活への配慮も忘れないようにしましょう。